毎年5月にイギリスのChelseaにて行われるイギリス王立園芸協会(RHS)が主催する園芸ショー「Chelsdea flower show 」をご存知でしょうか。
世界的に最も権威のあるガーデニングショーの一つで、世界トップクラスのガーデナーによる庭園がこのイベントのためだけに作り上げられ、世界中から園芸ファンが訪れています。会場はいくつかのセクションに別れています。
Show garden / Sanctuary garden – メインの庭展示
Grand pavilion – 生産者による展示、フローリストによるインスタレーション、Discovery という研究発表をするコーナーなど。
Chelsea in bloom-Chelsdea flower showと同時期に会場の周りの道を中心に数々の店舗が花を使ったディスプレイで春の訪れとフラワーショー開催をお祝いするイベント。
とても見応えのある展示ばかりでした。その中からいくつかご紹介をさせていただきます。
-Chelsdea flower show-
Horatio’s garden
今回Best show gardenで表彰されたガーデンです。
この庭は英国内にあるNHSの脊髄損傷センターで庭を通じて人々の希望で聖域でありたいという目的を持ってデザインされています。設計は障害を持った人の為にも緻密に計算され、車椅子の人がアクセスできるような段差がなかったり、植物もいろいろな高さでランダムに植えられうことによって、いろいろな人々の目線から見ても美しくなるようになっています。
まるでどこかの森の中の聖域に迷い込んだかのような没入感があり、五感に訴えかけるような仕掛けが沢山あります。特に庭の真ん中にある水の彫刻からは水のせせらぎが聞こえ、安らぎを感じるデザインでした。
RHS and Eastern Eye Garden of Unity
MONOJ MALDEによってデザインされた庭はピンク、オレンジ色の壁にカラフルなプランター、植物で囲まれた華やかで一際目を惹くものでした。彼は、人種、肌の色、信条、セクシュアリティー、障害に関係なく庭園やガーデニングは全ての人のものであるという強いコンセプトを基に、コミュニティーガーデンを製作したと述べています。
華やかな色使いはインドの女性が来ているサリーの色味にインスパイアされ、テーブルにはヒンドゥー教の儀式で使用されるオイルランプやスパイス果物でディスプレイされたり、クッションやプランターはアフリカの影響を受けているようです。庭としての美しさはもちろんのこと、庭を通じて人種や文化の違いを乗り越えて人々が公平に楽しんで交流してもらいたい、という強い意志を感じました。
The Biophilic Garden Otsu – Hanare
唯一の日本からの出展、石原和幸氏の庭です。”biophilic garden”と称されるように空間の中にいる人が自然とのつながりを感じられるように設計されています。
「バイオフィリックデザイン」は近年欧米の建築物で取り入れられている手法で、日常生活を営む場所が自然とつながってほしいという人間の本能的な欲求を満たすためのアプローチと説明されています。石原氏の日本庭園でも離れにいながら、まるで自然と触れ合っているかのような建築と自然が混じり合う境界線が溶け合うかのようなハーモニーを生み出していました。英国式ガーデン色が強いチェルシーフラワーショーで一から生み出された日本庭園はその中でも異彩を放ち、たくさんの人々が訪れ、木漏れ日やせせらぎに耳を傾けていました。
-Chelsea in bloom-
LION KING
会場は店舗ごとのディスプレイの他に道や広場の中心にメインの会場装飾が施されていました。その中でひときわ目を引いたのがLion Kingの装飾です。全ての動物たちは自然素材で作られており、パンパスグラスやドライフラワー、木の皮、苔などをうまく使って質感が上手に表現されていました。
チェルシーフラワーショーの全てに一貫するテーマとしてガーデニング/園芸は全ての人が楽しめるべきだ。というテーマを強く感じました。
展示されていたガーデンはチャリティーや慈善団体と密接にむすびついており、あらかじめ障がい者施設や病院などに向けて作られたされたものが多くありました。
そのまま廃棄になることがないように多くは慈善団体に売却され、そのまま移設されることが多いそうです。
また、そのほかの植物たちはショーの後廃棄されてしまうのではなく、
植物や建築資材がどこから来たのか、ショーの後にどのように処分する予定なのかを提出しなければいけなく部分的にでも再活用するよう心がけています。
想像を超えるような沢山の園芸ファンが集まり、春の訪れ、庭を楽しむ姿、温度感に圧倒されました。間違いなく自然、花、ガーデニングが人々の生活にいかに結びついているかということを間近で感じることができました。